高齢者の身体・心理的特性


高齢者の身体、心理的特性としてまずは視覚機能の変化があります。

1)静止視力

運転中の計器類が見づらいと思ったことはありませんか? 静止した状態で静止したものを見るときの視力を「静止視力」といいます。概ね40歳以上になると、静止視力の低下が始まります。これは、一般に「老眼」と呼ばれています。
運転席にある各種メーター類の標示や、カーナビの画面の文字が見えにくいと感じたら、まずは、眼科で視力の検査を行い、適正な眼鏡を使用するなどして解消しましょう。

2)動体視力

前方を見て運転しているとき、左右から突然クルマや歩行者が出てきたと感じたことはありませんか?動体視力は加齢とともに急激に低下してきます。また、長時間の運転は、疲れを招き、動体視力を著しく低下させますので、差し控えるようにしましょう。

3)夜間視力

夜間、運転をしていて前方のクルマのブレーキランプがぼやけたり、小さくなったりしたことはありませんか?
夜になると見えにくくなるのは、眼の老化が原因です。ヘッドライトの照射範囲内で止まれる速度運転をしたり、対向車の迷惑にならない範囲でヘッドライトを上向きに切り換えるなど、早めに危険を発見するようにしましょう。
速度を控えめにしたり、車間距離を長めにするなど工夫しましょう。

4)加齢性などの眼の病気

ご自分の視力について、どのように感じていますか? 加齢性の眼の病気により、夜間視力の低下や、視野が狭まり、視力が低下することもあります。知らないうちに病気が進行しますので、安全運転とイキイキした老後のために、年1回は眼科検診を受けましょう。早期発見、早期治療が大切です。

  • 加齢性などの眼の病気
    (例:白内障、緑内障、糖尿病性の網膜出血症)

視野の変化

一般に高齢になると、前方を見渡せる範囲も狭くなり、目の前を横断する歩行者の発見が遅れたり、他のクルマが横から急に出てきたような錯覚に陥ることもあります。 このような経験があったら、専門医に診てもらいましょう。
正面からの見落とし率は、高齢者も若年者もあまり差はみられません。しかし、正面から外れるにつれ、周囲の変化に気付かなくなる可能性が高くなり、交通状況の変化や標識を見落としやすくなります。 混雑した街路などを通行するときは、速度を落とし、意識して周囲の交通状況をとらえるように努めましょう。

聴覚機能の変化

一般的に高齢になると聴力の低下が目立つようになります。後ろから接近するクルマの警音器の音が聞こえず、ヒヤリとした体験があったら、耳鼻科の検診を受けましょう。
検診結果を受けて、補聴器を正しく使えば、聴力の低下をある程度補うことができます。

判断の遅れが生じ、正確さが低下

交差点で、付近の状況を正確に読み、ブレーキ、ハンドル、アクセルを操作するには、安全確認のために一呼吸!落ちついて操作すれば容易です。右折時も焦る必要はありません。
長い運転経験があっても、対向車との距離や速度の見込みに自信が持てないときは、無理をしない。安全を確認してから発進しましょう。
運転適性検査によれば、高齢者は運転操作をするまでの時間がかかり、誤った操作も増えてきます。交差点や右折時には無理をせず安全確認をしましょう。

まさかの運転や思い込み運転

毎日、通い慣れている道では、「人は来ないだろう」、「クルマは来ないだろう」と油断しがちです。気をつけましょう。
運転中に急いだり、運転以外のことを考えたり、同乗者と話をしていると、前方を見ているつもりでも見ていない状態になっていたりします。運転以外のことに気を取られないよう、「危険が潜んでいるかもしれない」、「クルマが来るかもしれない」という意識を持ちましょう。
また、通行者、対向車とのコミュニケーションをはかり、余裕を持った運転を心がけましょう。

混雑した場所でイライラしている場合でも、気持ちを落ち着かせ、冷静な運転を心がけるとともに、交通の流れにあわせた走行を心がけましょう。

ある人は「バックミラーを有効に活用し後方の安全を確認する」という方法で事故を未然に防いでいます。
また、70歳以上の運転者対象の「高齢者マーク」の活用も、安全運転の有効な手段になります。

体力の低下

体力的に疲れやすくなっていることは実感されているはずです。しかし、これは明るいうちに目的地に到着するよう、余裕を持った無理のない計画をたてることで充分カバーできます。

対処法としては

  • 運転前に、身体の状態をチェックする。
  • 運転前に軽い体操をし、身体をほぐす習慣をつける。
  • 変だなと感じたら、運転を控える。
  • 無理のない計画を立て、適切な休憩を取る。
  • 正しい運転姿勢を習慣づける。

などがあります。

社会の高齢化が進むにつれ、高齢者の皆さんと「くるま社会」との関係はますます深くなっています。しかしながら、ご自分では安全運転に心がけているつもりでも、客観的に見ると安全運転とはいえない場面が見られるとも言われています。
身体・心理的特性をよく理解し、安全運転のための手法を確認しましょう。

一般に高齢者の皆さんは、

  • 安全を守ろうとする強い気持ち
  • 自分をコントロールできる
  • 豊富な経験
  • 高い遵法意識

などの長所をお持ちです。それらの長所をいかすとともに、自分自身の心身機能の状態を自覚し、安全運転を心がけましょう。

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